ビールは液体のパン⁉ 驚きの栄養価と注意点とは? 前編
こんにちは。熊本の禁酒カウンセラーの溝尻啓二です。
一時は感染者が減少したものの、また最近、新型コロナウイルスの感染者が増加傾向にありますね。
巷では第二波ではないかとも言われていて、恐ろしくもありますが、それでも社会は徐々に経済活動を再開させつつあります。
この記事を読んでくださっている皆さまも、どうぞ感染予防を徹底し、お気を付けください。
さて、新型コロナが取り出され始めたのが今年の春先頃のことで、現在はもう初夏となり、すでに気温が30度に迫る真夏日となって来ました。
こう熱くなってくると、美味しくなってくるのがビールではないでしょうか?
熱気のこもるスポーツ観戦の場で、応援で乾いた喉を潤す冷たいビール。
ビアガーデンという、物理的にも精神的にも開放的な空間で飲むビール。
温泉やサウナで汗を流した後に飲むビール。
どれも美味しいですよね。
汗を流して火照った体に、キンキンに冷えた一杯のビールは、渇きを癒し、明日への活力を与えてくれます。
また、ビールは美味しいだけでなく、麦の麦芽から造られるビールは「液体のパン」とも言われるくらい栄養価が高く、適量を守りさえすれば最高の栄養ドリンクと太鼓判を押す専門家もいるほどなのです。
しかし、そんなビールにも実は危険な落とし穴があるのをご存知ですか?
そこで今回の記事の前編の記事では、これからの時期、夏に大人気のビールの効能を、後半の記事ではビールを飲む際の注意点を紹介して行きたいと思います。
ビールの種類
ビールと一言にいっても、様々な種類があるのをご存知ですか?
とくに最近では嗜好の多様化やライフスタイルの変化、グローバル化、健康志向などの向上などにより、ビールの種類も多様化しました。
アルコール度数もノンアルコール~8%と様々です。
最近では日本製はもちろん、外国銘柄ビールのライセンス生産も含めてバラエティーに富んだビールが楽しめるようになりました。
ビールは「麦芽」「ホップ」「酵母」「水」を主な原材料として造られますが、原材料の違いや、発酵や熟成の方法、添加物などによって種類が変わってきます。
ビールには「ビアスタイル」という分類法があり、これによれば、ビールの種類は、なんと100種類以上になるのだそうです。
ビアスタイルは、ビールの色やアロマの特徴、使用する酵母や発祥地などに基づいて、非常に細かく分類されます。
そのなかでも、日本で流通しているビールは、世界の100を超えるビアスタイルの中のたった数種類程度しか流通していないのです。
コンビニやスーパーの棚を埋め尽くすように並んでいるビールの種類を見ていると、とてもそうとは思えないかもしれませんが、実は日本で流通しているビールの99%以上は「ピルスナー」というスタイルなのです。
エールビールとラガービール
100種類以上に分類されるビアスタイルですが、ざっくりと大まかにまとめると、「エールビール」と「ラガービール」のふたつに分けられます。
この2つのビールも原材料は「麦芽」「ホップ」「酵母」「水」が原材料なのに違いはありません。
実際に「エールビール」「ラガービール」の名称は知っているけど、どう違うのかが分かる人は少ないと思います。
豆知識というか、ここで簡単に2つの違いについて解説したいと思います。
ざっくり言えば「エール」か「ラガー」かの違いはビール造りにおける「発酵」のさせ方の違いです。
発酵というのは、酵母菌などの微生物が糖質を炭酸ガスやアルコールに分解する過程のことで、一般的に流通しているビールのほとんどは「上面発酵」か「下面発酵」のどちらかで造られています。
上面発酵………
上面発酵は、発酵すると酵母が麦汁の上部に浮いてくるのでそう呼ばれています。
古代のビール造りでも使われていた方法。常温~やや高温で発酵し、発酵期間は3~4日。
熟成期間は約2週間。
下面発酵………
下面発酵は、発酵が進むと酵母がタンクの底に沈んでいくのでそう呼ばれています。
中世以降に始まったビールの作りの方法。5度前後の低温で発酵し、発酵期間は7~10日。
熟成期間は約1ヵ月
そして上面発酵で造るビールを「エール」、下面発酵で造るビールを「ラガー」といいます。
上面発酵ビール(エール)の方が歴史が古く、下面発酵ビール(ラガー)は中世以降に始まり、その後19世紀以降には世界的に主流になりました。
理由としては、下面発酵ビールは低温で発酵が行われるため、雑菌がしにくく製造管理がしやすいといったメリットがあるためです。
そのため、一定品質のビールを大量生産するのに向いていたからです。
日本で流通しているビールの多くも、ほとんどがこの下面発酵ビール(ラガー)の「ピルスナー」というスタイルで、世界で最も普及しているビールともいわれています。
ちなみに発酵には、培養されていない野生酵母を使った「自然発酵」というものもあります。
自然発酵は世界で最も古いビールの造りの方法で、その歴史は紀元前の古代メソポタミアにまで遡ります。
自然の酵母を使う手間から、現在はあまり多くは作られていません。
生ビールとは?
私くらいの世代だと、居酒屋に行くと「とりあえず生ビール」で乾杯します。
そうしてグラスを傾け、そのきめ純白で口当たりの良い泡と、スッキリした新鮮な味わいに「やっぱり生は違う!」と舌つづみします。
しかし、この「生ビール」の「生」とは一体何のことだと思いますか? 缶ビールや瓶ビールと何が違うと思いますか?
ビールの「材料」が違うのでしょうか?
酵母の「発酵」のさせかたが違うのでしょうか?
それとも「樽出しのビール」のことでしょうか?
容器など「入れ物」の違いでしょうか?
もしくは飲み屋さんで出てくるビール全般をそう呼ぶのでしょうか?
ちなみに私は、「お店ではビールは樽に入っていて、それから直接グラスに注がれた新鮮なビール」のことだと思っていました。
つまり「樽出しのビール」のことだと思っていたのです。
その答えは、
「缶ビール」も「瓶ビール」も、同じ「生ビール」だったのです!
というのも「生ビール」の定義は「熱処理をしていないビール」のことなのです。
逆に、熱処理をしたビールのことを「熱処理ビール」と呼びます。
ビール造りには7つの工程があり、
➀『原料選び』
➁『製麦』
③『粉砕』
④『仕込み』
➄『発酵』
➅『熟成』
➆『ろ過・熱処理』
この最後の➆『ろ過・熱処理』でビールに熱を通して、ろ過をします。
理由は酵母の働きを止めることと、雑菌の活動を可能な限り止めることにあります。
熱処理といっても、ぐつぐつ沸騰させるわけではなく、50~60℃という比較的低い温度帯で処理を行います。
熱処理をすることで、品質の変化を防ぎ、ろ過することでクリアなビールが生まれ、美しい色合いとスッキリ澄んだ味わいのビールが出来ます。
また、加熱することにより保存性に優れ、常温でも品質が変化しにくいビールになります。
そのため昔はこの熱処理を行う、「熱処理ビール」が一般的でした。
しかし最近はビール造りは醸造技術の向上により、熱処理をしなくても、ろ過するだけで酵母を除去することができるようになったのです。
そのため流通している大手ビールメーカーのビールのほとんどは「ろ過により酵母を取り除いただけで熱処理されていないビール」なのです。
つまり、普段スーパーやコンビニで見かける缶ビールも瓶ビールも、入れ物が違うだけで、中身は「生ビール」ということになります。
とは言っても、
「いやいや、居酒屋で飲む生ビールは、家で飲む缶ビールより圧倒的に美味しいんだけど」
と思っている方も多くいらっしゃるでしょう。
確かに、居酒屋で飲むビールは家のビールとは一味も二味も違いますよね。
中身は一緒だと言われても、すんなりと納得出来ないのも確かです。
その違いが何かというと、ずばり、生ビールを提供するお店側の努力の賜物に他なりません。
なぜなら、「熱処理ビール」に比べて、「生ビール」は保存方法や管理の仕方を間違えると味の劣化が速いからです。
ビールサーバーの存在と品質管理、正しい注ぎ方など、お店の努力が、生ビールの味にきっちり反映されているというわけです。
ビールの歴史は古い
世界最古のお酒は蜂蜜酒ですが、ビールの歴史も実は相当に古いです。
蜂蜜酒もビールも、偶然から生まれた産物でした。
蜂蜜酒は熊に食べ荒らされた蜂の巣に雨水がたまり、それが醗酵して出来上がったものです。
ビールも、大麦を混ぜた何かに偶然水分が入り、それが放置されて「自然発酵」が起きた液体がビールになったと言われています。
また、バビロン王朝のハムラビ法典には、世界最古のビールに対する法律が記されています。
それによれば紀元前1700年代半ばには、すでに醸造所やビアホールの様なお店も出現していたようで、その取り締まり規則、罰則規定などが交付されていました。
なかには「もし神に仕える女がビールを飲みに店に行ったら処刑される」など、女性に対するかなり過激な法律も多かったようです。
世界最古のビールはメソポタミア産
最古の記録としては「紀元前3000年頃」で、世界四大文明のひとつとされているメソポタミアのシュメール人によって作られたものいわれています。
つまり、ビールは少なくとも今から5000年前には誕生していたというのです。
当時の粘土板にはビールを作る様子が楔形文字で描かれていました。
この頃のビールは、粉にした麦芽で作ったパンを砕いてお湯で溶かし、「自然発酵」させたもので、「液体のパン」とも呼ばれていました。
当然、当時はろ過技術などは発展していませんでいたので、固形物や不純物も相当混じっていたものと考えられます。
今でいうスムージーやシェイクのような感じでしょうか?
ですが、当時の人々はそれらをストローの様なもので取り除きながら飲んでいたようです。
ストローでお酒を飲む………相当に悪酔いしそうですね(苦笑)。
ちなみに、当時このビールは、自宅で女性が造り、好んで飲まれるようになったそうです。
最古の老舗エジプト産のビール
古代メソポタミアの次にビールの歴史が確認できるのがエジプトです。
紀元前2700~2100年頃のエジプトのピラミッド内部の壁画にビールつくりの様子が描かれています。
その壁画から推測されるビール製法はほぼメソポタミアと同様ですが、パンに水を加えず、パンそのものを醗酵させてビールを作っていました。
また、古代エジプトと言えばピラミッドです。
そして、ビールとピラミッドには実は密接な関係がありました。
当時、ピラミッドの建設に関わった多くの労働者にはビールが支給されていたという記録が残っているのです。
麦を原料に醸造されるビールには、発酵の過程で生まれる糖類やビタミン、ミネラルなどが多く含まれています。
この当時のビールのアルコール度数は10%と高く、栄養が豊富で、疲労回復にも効果がありました。
また、古代エジプトでは、ビールは飲み物だけではなく薬としても用いられていました。胃薬や、手足の打撲にはビールを湿布薬としても使われていたようです。
紀元前500年頃になると、ギリシアでもビールの作り方をエジプト人から学び、飲まれるようになりました。
パンを使わない新たなビール
パンを使わない新たなビールを作りだしたのは、紀元前500年頃の北ヨーロッパに定住していたゲルマン人とされています。
メソポタミアやエジプトのようにパンを使わず、鍋で麦汁を作って野生の酵母の働きで発酵させるという方法でビールを作り始めました。
麦類を麦芽に加工するというこの「自然発酵」の技術は、現代のビール造りにも通じるものがあります。
ちなみに上記の古代エジプトでもワインは高級な飲み物で、ビールは庶民的な飲み物とされていました。
理由としては古代オリエント世界(西アジアからエジプト、東地中海を含む、インダス川までの地域)ではブドウの育つ場所が限られていたからです。
逆に、ギリシアやローマの気候はブドウの栽培に適していた気候だったためワインの醸造が主流でした。
しかしその後、ゲルマン人が南部も含めたヨーロッパ各地に移動するなか、ビール造りも進化しながら各地に普及していったものと考えられています。
ちなみにビールのアルコール度数はワインよりも低かったなどの理由から、ローマではビールはゲルマン人が飲む野蛮な飲み物として捉えられていたようです。
当時ローマ時代の歴史家・博物誌家のタキトゥスの書「ゲルマニア」にも、
『飲料は大麦または小麦から作られ、いくらか葡萄酒に似ているが品位の下がる液体である………』
と、ビールはあまり上等な酒とは思われていないような記述があります。
ですが、当時の生水は非常に不衛生です。水を沸騰させて作るビールは、実は非常に安全な飲み物だったと思われます。
ビールは神聖なもの
中世のヨーロッパでは「ビールは液体のパン」「パンはキリストの肉」という考え方から、キリスト教の修道士の間でビール造りが盛んになりました。
この当時、修道院は経験と知識の宝庫で、知識人である彼らの造ったビールは品質の高いものだったそうです。
主に自給と巡礼者に振る舞うためのものでしたが、その知識と経験に裏打ちされた高い品質のビールは人気が高く、次第にその醸造量も増え一般人にも広まることになりました。
そうして中世末期になると民間でもビール造りが開始されることになります。
今日のビール造りに欠かせない材料が「ホップ」ですが、「ホップ」が登場するのはもう少し後の話になります。
この頃は、「グルート」と呼ばれる添加物をビールに添加していました。
ちなみにグルートとは発酵を安定させるなどの目的で様々な薬草(ハーブ)を複雑に配合したもので、ビールに風味を与え、保存性を高める効果があり、栄養価も高く栄養補給医療にも利用されていたとされています。
その配合レシピは、独占販売権を持つ領主によって秘密とされていて、彼らはグルートを独占することで、多くの利益を得ていました。
近代ビールの誕生
11世紀頃になるとグルートの代わりに「ホップ」が用いられるようになります。
ドイツのヒルデガルトという女子修道院長がビールにおけるホップの特性を、初めて詳細に記述しています。
ホップには独特の爽やかな風味と雑菌抑制作用があり、独占販売権にも縛られず、またグルートよりも味と保存性に秀でていたことから、ホップを使ったビールが主流になっていきます。
13世紀に入ると、修道院産「グルートビール」と都市産「ホップビール」の間で、2世紀に渡って激しい販売競争が巻き起こることになります。
そうして15世紀以降、都市の発展とともにギルド制が定着し、ビールの醸造は市民の手に移るようになってきます。
ビールが市民に広く愛飲されるようにるに従って、醸造技術に次々と改良が加えられ、ビールの品質はより向上していったのです。
ビールをビールとして定義付けされたのは、1516年のドイツが「ビール純粋令」施行してからです。
ビール純粋令とは食品の品質保証に関して、世界最古の法律のひとつで「ビールは大麦の麦芽とホップ、酵母(当時はまだ発見されていなかった)、そして水以外のものを用いて醸造してはならない」というもので、現在のでもドイツ国内の醸造所の多くは、ビール純粋令を遵守しています
これによってその後のドイツビールの声価は高まることになり、ビールというモノの定義が決定されることになりました。
その後、ラガービールの酵母が発見されます。
それまでビール造りは、気温が低く腐敗のリスクが少ない冬に行われていました。しかし当時のビール造りは上面発酵が主流でした。上流発酵の酵母は温度が低すぎると発酵が進まないというジレンマがあったのです。
そんな当時の醸造家の悩みを解決してくれたのがラガービール酵母でした。
ラガービール酵母は低温でも発行が進むという性質を持っているため、温度が低すぎる日でも、また低すぎる地域でもビールが造れるようになったのです。
そうしてビール醸造の技術はますます発展していくことになります。
19世紀になると私たち日本人にもなじみ深い、きめ細かい純白の泡と黄金色の見た目が麗しい「ピルスナー」がチェコ・ボヘミアンで開発され、ヨーロッパを席巻しました
クラフトビールの誕生
クラフトビールの誕生のきっかけはアメリカの「禁酒法」でした。
1910年には1000社を超えるビール会社があったのですが、禁酒法が施行された1920年には、アメリカのビール会社は100件にまで激減したといいます。
そのため、1933年に禁酒法が廃止されてもビールのバラエティーは減少したままで、アメリカのビールは大量生産、画一のラガービールばかりが流通している状況でした。
1970年になると「ならいっそ自分で飲みたいビールを作ればいいじゃん」と、画一のビールに飽きたアメリカのビールファンが自宅で「自家製ビール」を造り始めたのです。
伝統的な原料を使い、手法が尊重されながらも、併合される添加物によって様々な風味が加味され、多様でユニークなビールが生まれることになりました。
そいうして自家製ビールで腕を磨いた猛者たちが中心となり、小規模なビール醸造所を立ち上げ、個性的で多様なビール造りを始めました。
これが「クラフトビール」の始まりです。
特徴としては、品質が重視されていることと、大手のビールメーカーに比べはるかに種類が豊富で、多様な個性があふれるビールであることです。
余談ですが、ホップビールが主流になっていく陰で消えていったグルートビール………いったいどのような味がしたのか、ビール好きなら気になって仕方がないのではありませんか?
しかし残念ながら、このグルートのレシピは上記したように、独占販売権を持つ領主によって厳重に管理され、醸造業者は領主から購入しなければいけませんでした。
そのため、中世ヨーロッパで用いられていたグルートの製法は現在には伝わっていないそうです。
今の時代に蘇れば、きっと素敵なクラフトビールになるかもしれません。
ビールの驚きの栄養価
上記でも紹介したように、ビールは「液体のパン」といわれるくらい栄養価が高く、遥かな昔から疲労回復や栄養補給、ときには薬としても用いられてきました。
現代でも「ビールは飲み過ぎにさえ気を付ければ非常に優れた栄養ドリンクだ」と太鼓判を押す専門家もいらっしゃるくらいです。
ポリフェノールには抗酸化作用があり健康に良いというのは周知の事実です。
そしてそのポリフェノールが一番多く含まれているお酒はワインです。
ですが実は、ビールはワインに続いてポリフェノールの含有量が多いお酒であることはご存知ですか?
ビールの主原料はホップ、麦芽、ビール酵母の3つですが、その栄養成分を見てみると、確かに豊富な栄養価に驚かされると思います。
下記でそれぞれに含まれる栄養成分を紹介したいと思います。
ホップ
ホップに豊富に含まれるポリフェノールには抗酸化作用があり、その他にも鎮静作用、催眠作用、殺菌作用、食欲促進などの薬用効果が認められています。
他にも女性ホルモンと似た働きをする「フィストロゲン」という物質も含まれていて、加齢とともに減少する女性ホルモンをビールの「フィストロゲン」で補うことが可能とされています。
つまりビールを飲むことで、女性ホルモンのバランスの乱れが原因で起きるとされる更年期障害、肩こり、冷え性の改善、肌の老化予防の効果が期待できるのです。
さらに、「ホップは女性の為のハーブ」とも言われていて、ラベンダーに似たその香りにはリラックス効果があり、精神を安定させる効果も期待されます。
また、近年の研究ではホップ由来の苦み成分である「イソα酸」には、アルツハイマー病の進行を抑制する作用が期待されているほか、生活習慣病や肥満、骨密度低下を抑制する効果も研究されています。
麦芽
麦芽にはビタミンB群、葉酸、カルシウム、カリウム、マグネシウム、リン、ナトリウムなどの栄養成分が含まれています。
ビールには多くの麦芽が使われているため、特にビタミンB群やミネラル類が豊富です。
ビタミンといえばビタミンCが認知度が高いですが、ビタミンB1は、実は世界で最初に発見されたビタミンで、「疲労回復ビタミン」の別名があります。
ビタミンB2には新陳代謝を促す効能があり、脂質の燃焼させる効果もあることから、「美容、発育のビタミン」と呼ばれています。
ビタミンB6にはたんぱく質の代謝を助けたり、免疫機能の維持、神経系の働きの維持する働きがあり、神経伝達物質(セロトニン、ギャバ、ドーパミン、アドレナリンなど)の生成に関わってくることから。「心のビタミン」と言っても過言ではありません。その他にも皮膚や粘膜の健康維持に役立っています。
このように、健康の維持に大切なビタミンB群ですが、これらB群はそれぞれ単独で働くというより、お互いが助け合うことでエネルギーの供給や老廃物の代謝を行います。
そのため、たとえばビタミンB1だけを大量に摂ったとしても、他のビタミンB群が足りなくてほとんど健康効果が得られません。
特にビタミンB1、B2、B6の3つは、同時に同じ量を摂るのが望ましいとされていて、どれが欠けても疲れやすくなって体調不良の原因になります。
ビール酵母
ビール酵母にはたんぱく質や核酸、ビタミンB群、食物繊維などが豊富に含まれています。
「健康な体は腸から」という言葉があるように、腸は私たちの日々の健康にたいへん大きな関わりがあります。
その中でも乳酸菌の働きは特に重要で、ビール酵母にはその乳酸菌が腸内で増殖するのを助けたり、余分なカロリーの吸収を抑える働きがあります。
食物繊維にも整腸作用がありますので、慢性的な便秘の改善にも役立ちます。
核酸には美肌効果に代表される新陳代謝の促進や、血管を拡張して血流を良くする効果もあり、認知症などの老化を予防する効果も期待できます。
たんぱく質には人間の体内では生成できない必須アミノ酸をバランス良く含んでおり、脳の働きを活発にしたり、また血圧を安定させる作用があります。
ビール酵母はビタミンB群も豊富に含まれています。。ビタミンB群の詳しい紹介は上記を参照してください。
これなら古代の人たちが、栄養補給に利用していたことも頷けてしまいますね。
特に、同時に同じ量を摂ることが望ましいビタミンB群が揃ってるのはポイントが高いです。
まとめとして
ビールは古くから「液体のパン」と呼ばれているように栄養面で優れています。
ビールには16種類のアミノ酸、17種類のビタミン、14種類のミネラルなど、実に50種類以上の栄養成分が含まれています。
大航海時代には、ビールは腐りやすい水の代わりに飲料用つぃて、また脚気(かっけ)を予防する飲み物として船に積み込まれてもいました。
アメリカ大陸発見の立役者であるメイフラワー号には、400樽ものビールが積み込まれていたといいます。
医学が進んだ現代でも、適量を守って飲めばビールは最高の栄養ドリンクになり得ると太鼓判を押す専門家もいるほどで、実際に下記の効果効能があると言われています。
・心筋梗塞や狭心症などの発病のリスクの低下
・アルツハイマー病の進行抑制
・動脈硬化や心臓発作の予防
・糖尿病のリスクの低下
・ビールの利尿作用が結石を押し流してくれる
・骨がもろくなるのを防いでくれる
・善玉コレステロールを増やす
・女性ホルモンの乱れによる更年期や、肌荒れ冷え性などの解消
・便秘の解消の効果
・疲労回復や美肌効果
・リラックス効果
もちろん飲み過ぎは禁物ですが、これらの効果も各研究機関の研究や論文で発表されていたり、医師が認めているものです。
今回の記事の「ビールは液体のパン 驚きの栄養価と注意点とは? 前編」では、ビールの歴史と健康効果をご紹介してきました。
後編では、ビールのリスクや飲む際の注意点、上手な飲み方などをご紹介したいと思います。
気になる方は後編も読んでいただけると幸いです。