アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)とは?

こんにちは。熊本の禁酒カウンセラーの溝尻啓二です。

今回はアルコールの分解で重要なカギを持つ酵素。アセトアルデヒド脱水素酵素についてお伝えしたいと思います。

アセトアルデヒド脱水素酵素とは、アルコールを分解する過程で生じる有毒物質のアセトアルデヒドを、無害な酢酸分解する代謝酵素です。

アルデヒドデヒドロゲナーゼとも言われます。

あまり知られていないかもしれませんが、「酒酔い」には二種類あります。

ひとつはアルコールに含まれるエチルアルコールが脳の機能を抑制させることで引き起こされる「酒酔い」。

もうひとつが、体内でアルコールを分解したときに生じるアセトアルデヒドによって引き起こされる「酒酔い」です。

一般的にお酒に強い人と言われるタイプは、後者のアセトアルデヒドによって引き起こされる「酒酔い」に強い人の事をいいます。

そしてそれは、「お酒に強い人=酒酔いが速く抜ける人」ということではありません。

アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の働き

飲酒されて体内に入ったアルコールは、胃で約10%、残りの90%は小腸で吸収され肝臓のアルコール脱水素酵素(ADH)で、まずアセトアルデヒドへと分解されます。

そうして発生したアセトアルデヒドは、肝臓内でアセトアルデヒド脱水素酵素によって酢酸に分解されます。

このあと、酢酸はさらに二酸化炭素や水に分解され、最終的には体外に排出されることになります。

こうした過程を経て、アルコールは体内から抜けることになるわけですが、このアルコールを分解したときに出来る代謝産物であるアセトアルデヒドが非常に厄介なのです。

アセトアルデヒドは毒性が非常に強く、二日酔いや悪酔いの原因とされており、発がん性物質でもあります。

また、飲酒したときに現れる、顏が赤くなる、動悸がする、冷や汗が出る、血圧が上がる、頭痛、吐き気、悪心などの症状はフラッシング反応と呼ばれ、アセトアルデヒドが原因です。

このアセトアルデヒドを分解し、無害なものにしてくれるのがアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)です。

2型アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)の活性タイプ

有害なアセトアルデヒドを分解してくれるアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)ですが、この酵素は人間なら誰でも持っている代謝酵素です。

でも、誰でも持っている酵素なのに、どうしてお酒に強い人もいれば弱い人もいるのでしょうか?

それはズバリ、個人によってALDHの活性に強弱があるからです。

体内のアセトアルデヒド濃度が高濃度にならないと働かない1型アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH1)は個人差が少ないのですが、体内のアセトアルデヒド濃度が低いときから働く2型アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)は個人差が非常に大きく、その差がお酒に強いか弱いかを決める重要なカギとなっています。

お酒に強いか弱いかは体質の問題であり、遺伝で決まるという話は多くの人が聞いたことがあると思います。

これはまさしくその話で、このALDH2の活性は、その人の遺伝的要素によって決まります。

ALDH2の活性には人によって生まれつきの強弱があり、3タイプに分類されます。遺伝のパターンで見れば、お酒に強いのか弱いのかは非常にシンプルです。

お酒に強い両親から生まれた子供は、お酒に強いALDH2の活性が高いタイプ。

逆に両親共にお酒に弱い場合は、お酒が飲めないALDH2の活性が失われているタイプ。

両親がお酒に強い人と、弱い人だった場合は、ALDH2の活性が低いタイプとなります。

それぞれを上から順番に、

お酒が強いNN(Normal/Normal)タイプ。

お酒が飲めないDD(Deflcient/Deflcient)タイプ。

お酒に弱いND(Normal/Deflcient)タイプ。

自分のALDH2の活性のタイプを知りたい場合は、簡易的ではありますがアルコールパッチテストをすることで知ることができます。

ALDH2の活性タイプの特徴

お酒に強い人というと、皆さんはどのような人をイメージしますか?

多くの人が、お酒を飲んでも顔が赤くならない人と答えるのではないでしょうか?

逆に、お酒に弱い人というのは、すぐに顔が赤くなる人をイメージするのではありませんか?

ここでALDH2の3タイプの違いと特徴を簡単に説明したいと思います。

NNタイプ………活性型

お酒に強い体質。

ALDH2が安定で正常な働きをします。両親から、アセトアルデヒドの分解能力が高いN型の遺伝子を受け継いだ人。

一般的にお酒に強いと言われる人たちです。酒豪、または「ざる」。

アセトアルデヒドによる影響(頭痛、吐き気、悪心、二日酔い)をほとんど受け付けません。

つまり悪酔いをしにくいタイプといえます。

酒を飲んでも顔が赤くならないノンフラッシャーが多い。

DDタイプ………失活性型

お酒が飲めない体質。

両親からD型の遺伝子を受け継いだいわゆる下戸。

お酒に弱いどころか、全く飲めません。

奈良漬けを食べただけで真っ赤になってしまうタイプ。

ほとんどの場合がフラッシャーです。

消毒液や、栄養ドリンクに含まれる少量のアルコールを含むものでも、赤くなってしまうなど敏感に反応する人もいます。

アセトアルデヒドを分解する能力がほとんどなく、アセトアルデヒドが大量に、長時間身体に蓄積するため飲酒は厳禁。

これを訓練などで克服することは絶対に不可能とされています。

大量飲酒などをした場合、命にかかわります。

NDタイプ………不活性型

お酒に弱い体質。

低活性型と呼ぶ場合もあります。

両親から分解能力が高いN型と、分解能力が低下したD型をそれぞれ引き継いだタイプ。

全く飲めないタイプではないのですが、基本的にお酒には弱いためフラッシャーが多い。

最初は限りなく下戸に近いのですが、飲酒を繰り返すことでお酒に強くなる(耐性を付ける)ことができます。

ですが、アルコールが代謝された後に生じるアセトアルデヒドを分解する能力が弱いため、アセトアルデヒドの毒性に長時間さらされることになります。

そのため飲酒に関する病気になりやすいといわれています。

飲酒によるリスクが低いタイプは?

ALDH2には、お酒に強い活性型、全く飲めない失活性型、お酒に弱い不活性型がそれぞれあることがわかっていただけたと思います。

アセトアルデヒドは非常に毒性が強く、悪酔いや二日酔いの原因となる物質です。

つまり、ALDH2の活性が弱いという事は、毒性の強いアセトアルデヒドが体内で分解され難く、体内に長く留まるということです。

不活性型や失活性型はアセトアルデヒドの影響を受けやすい体質のため、一般的にお酒に弱い人、全く飲めない人ということになります。

また、日本人のような黄色人種の場合A、活性型は50%程度、不活性型が40%程度、失活性型が10%程度となっています。

その一方で、白人や黒人はほぼ100%が活性型です。

日本人は実に半分の人がお酒に弱いということになります。

ちなみに、私のALDH2のタイプも不活性型でした。

私のような不活性型の人は、活性型の人に比べて約1/16の代謝能力しかなく、失活性型の人にいたっては代謝能力を失ってすらいます。

ですので、活性型の人と比べると飲酒によるアルコール疾患のリスクが高いように感じてしまいます。

事実、不活性型は飲酒習慣が関係して発症すると考えられている、咽頭がんや大腸がんの発症率が高いことが知られています(不活性型がアルコール性の癌を発症するリスクは、活性型の1.6倍)。また、同じ量の飲酒を継続した場合、活性型よりも短期間でアルコール依存症になることも知られています。

では、活性型は飲酒によるリスクがないのかと言うと、実はそんなことはありません。

活性型には活性型のリスクがあるのです。

活性型は、確かにアセトアルデヒドに強いのですが、アルコールによる本来の酒酔い(脳のマヒ)はアセトアルデヒドの分解能力とは関係がないため、不快感を感じない分、大量飲酒をしてしまう傾向があります。

そのため、活性型の人がアルコール依存症になるリスクは、お酒に弱い不活性型の6倍とも言われています。

実際、日本のアルコール依存症患者の9割弱はこの活性型の人とのこと。

さらに、活性型しか存在しない白人・黒人の社会である欧米などでは、アルコール依存症が深刻な社会問題となっています。

このように、実は飲酒によるリスクは活性型、不活性型どちらにも存在します。

よって、飲酒によるリスクが低いALDH2のタイプは、お酒が全く飲めない失活性型の人ということになります。

失活性の人達は、まず自分からお酒を口にすることはありません。

よって飲酒によるアルコール疾患のリスクもないということです。

ただ、注意することとして失活性型の人はともすれば重篤な状態になりますので、お酒の席でノリで勧められても、「飲めません」とはっきり辞退しましょう。

そのためにも自分のALDH2のタイプを知っておくことは重要になります。

是非参考にしてください。

まとめとして

一般的にお酒に強い人と言われているのは、ALDH2が活性型の人達です。

しかしそれは、アルコールが代謝された後に生じるアセトアルデヒドを速やかに分解できるということで、実際には飲酒した量のアルコールに応じて脳は麻痺していて、アルコールによる「酒酔い」に変わりがあるわけではありません。

つまり、アセトアルデヒドによる影響(頭痛、吐き気、悪心などのフラッシング反応)をほとんど受けないというだけなのです。

アルコールによる本来の「酒酔い(脳の麻痺)」が速く抜けるということではないということを心に留めておいてください。

また、いくらALDH2が活性型の人でも、その分解能力には限界があります。それを超えて飲酒をすればいくらお酒に強い体質の人でも必ず二日酔いになってしまいます。

飲み過ぎには、くれぐれも注意してください。

禁酒カウンセリング tender~テンダー