アルコールの分解を早くする方法
こんにちは。熊本の禁酒カウンセラーの溝尻啓二です。
前回の「アルコールの分解、抜けるまでの時間は?」の記事では、
飲んだお酒が身体から完全に抜けるには、思っていたよりも長い時間が掛かるということを書きました。
今回はそのアルコールの分解を少しでも早くするのに役に立つ方法を書いていきたいと思います。
アルコールを体内に残さず分解できれば、あの嫌な二日酔いの不快な感覚を味あわないですみます。
ですが、これらの事をしたからといってアルコールを飲んだあとすぐに車を運転できるということではありません。
というのも、『酔いの度合い』というのは血中アルコール濃度で表されるからです。
血中アルコール濃度とは、言葉の通り血液中に含まれるアルコールの量のことです。
お酒が完全に抜けた状態というのは、この血中アルコール濃度が0%になっていことをいいます。
そして、「酒気帯び運転」に触れる血中濃度は0.03%以上だからです。
ビール中瓶1本程度のアルコールを飲んだ場合の血中アルコール濃度は、
0.02~0.04%です。これを、呼気1リットル当たりのアルコール量に換算すると、
0.1~0.2㎎に相当します。
つまり、
ビール中瓶1本、日本酒1合、焼酎0.06合程度のアルコールを飲んだだけで、「酒気帯び運転」の基準を超えることになります。
いくら意識がはっきりしていても、
少量しか飲んでいなくても、
飲んだあとに少し寝たとしても、
一定基準以上のアルコールを体内に保有したまま運転すると飲酒運転になるので、お酒を一口でも飲んだなら絶対に車両は運転しないようにしましょう。
警察が取り締まっているからではなく、悲惨な事故を招かない為にも、絶対に飲酒運転はしないでください。
出だしから硬くなってしまいましたが、
以上のことを踏まえた上で、少しでもアルコールを身体から抜くのを早める方法などを紹介していきたいと思います。
アルコールの吸収
お酒を飲むと、アルコールは胃で20%、小腸で80%吸収され、血液中に溶け込み、その大部分が肝臓で処理されます。
消化管内のアルコールは飲酒してから1~2時間でほぼ吸収されますが、胃からの吸収に比べて、腸からの吸収は早いので注意が必要です。
胃を切除している場合、飲んだアルコールはダイレクトに小腸に入ることになります。
早く吸収されれば、早く分解されるのかというとそいういうことはなく、
むしろ血中アルコール濃度が急激に上がると、肝臓の分解機能が追い付かなくなり、悪酔いの原因になります。
同じように空腹時に飲酒をすると、アルコールは小腸に直接流し込まれることになるので、アルコールの吸収がはやくなってしまいます。
空腹時の飲酒を避け、食事と一緒に飲酒するのが良いといわれる理由がここにあります。
食事やつまみと一緒に飲酒をすると、アルコールが胃に留まる時間が長くなるので、吸収が遅くなり、血中濃度の上昇も低くなるのです。
アルコールの分解
体内に取り込まれたアルコールの大部分は肝臓で分解されることになります。
汗、尿、便などで直接身体の外に排出もされますが、それは摂取したアルコールの数パーセント程度でしかありません。
この肝臓内でのアルコールの分解は2つのステップで行われます。
アルコールはまず、ADHと呼ばれるアルコール脱水素酵素で、有毒なアセトアルデヒドになります。
アセトアルデヒドはさらに、ALDHと呼ばれるアセトアルデヒド脱水素酵素により、酢酸へと分解されます。
酢酸は血液に乗って全身へめぐり、心臓や筋肉などでさらに分解され、
最終的には水と二酸化炭素に分解され、汗や尿、呼気中に含まれて身体の外へと排出されることになります。
空腹時の飲酒は避け、おつまみを食べながら飲む
アルコールの吸収のところでも書きましたが、空腹状態での飲酒は避け、食べながら飲みましょう。
アルコールは他の食品と異なり、消化されることなく吸収されます。
胃は食べ物を溜めて、溶かしてから小腸へ送るのですが、これは固形物が入ってきた場合のみ、胃の出口を締めて摂取した食べ物を留めてくれます。
が、液体の場合はその出口が閉まらず、直接小腸へと流してしまうのです。
アルコールは胃でも吸収されますが、その8割は小腸から吸収されます。
胃の中に食べ物が無い状態では、アルコールは胃に留まらず、小腸まで流れて行ってしまうので、酔いが速くなるのです。
そして、血液に乗って全身をめぐり、脳に作用します。
仕事帰りに飲みに行くことになって「今日はほどほどにしよう」と心に決めたはずなのに、ついつい飲み過ぎて、次の日二日酔い………
という経験はありませんか?
「アルコールが脳に及ぼす効果と影響!」の記事でも書きましたが、アルコールは麻酔作用があり、脳の理性的な働きを弱めてしまうのでしたね。
もちろん量によっても変わりますが、最初に酔ってしまった方が、摂取するアルコール量が増える傾向があるとされています。
酔いを遅くすれば自然とアルコールの総量を減らすことができますし、総量が減れば肝臓への負担も減ります。
アルコールがちゃんと分解されれば、二日酔いになることもありません。
乾杯する前に何かを胃に入れておくのが理想ですが、多くの場合、食事を食べ始めるのは乾杯の挨拶のあとですよね。
乾杯の後、お酒を飲んでから、食べ始めると思います。
なので、飲み会が始まる前に、軽くでもよいので何かを食べていくことをお勧めします。
たったそれだけで、随分と悪酔いしなくなりますので、是非試してみて下さい。
お酒と一緒に食べ物ると良いもの
お酒の吸収を遅らせるためには、胃の中にアルコールを留めておく必要があります。
つまり、お酒を飲む前に少し食べることです。そうすることで胃の出口が閉まります。
また、繊維質や脂肪分が入ると、長時間お酒が胃の中に留まる傾向があるそうです(消化があまり良くないからでしょうか)。
アルコールと食べ合わせの良い食品は、高タンパク質なものがよいです。
タンパク質にはアルコールを分解する肝臓を活性化させる効果があるからです。
枝豆、冷ややっこ、煮込み、だし巻き卵、マグロやカツオ、イカの刺身、ササミ、空揚げ、チーズ、またはオリーブオイルを使ったサラダなどです。
これらは居酒屋の定番のメニューですね。
私は「居酒屋のメニューは、味に違いはあっても、どこも似たり寄ったりのメニューばかりだなあ」と思っていましたが、
これらはひょっとしたら、お酒を上手に飲ませるための工夫なのかもしれませんね。
ちなみに、お酒を飲むなど牛乳などを事前に飲んで胃をコーティングすると良いという話をきいたことがあると思いますが、
医師の先生によると、
「コーティングという発想自体に意味がなく、そもそも胃は粘膜で十分にコーティングされているので、アルコールの度数がよほど強いお酒を飲んだりしない限りは、粘膜がボロボロになることはありません」
とのことです。
お酒を飲みながら、水をたくさん摂る
お酒を飲んだら、水もできるだけたくさん摂るようにしてください。
なぜなら、アルコールを分解する際には水分が必要だからです。
アルコールには利尿作用があるため、お酒を飲むと、身体は少なからず水分不足になります。
飲酒は脱水状態を引き起こすため、水分の補給は必須です。
はっきりと言えば、お酒は水分ではありません。アルコールは利尿剤です。
テレビのコマーシャルなどで、お風呂上りにビールを美味しそうに飲むシーンや、
炎天下でビールを飲むシーンなどから、お酒類は水分補給になるようなイメージを持ってしまいそうですが、
実際には、お酒を飲んだ以上に尿として水分が出て行ってしまいます。
特にビールは利尿作用が強い酒類です。
お風呂上りや、サウナの後にビールは、発汗で水分が失われたている状態のため、実はとても危険な行為です。
また、身体が水分不足(脱水)状態だと、有害なアセトアルデヒドが速やかに排出されず、身体の中に長時間留まることになります。
上記の「アルコールの分解」の項目でも書きましたが、
アルコールはまず肝臓でアセトアルデヒドに分解されて、そのあと酢酸に分解されます。
その酢酸はさらに血液で全身に流れ、筋肉で水と二酸化炭素に分解され、最終的には尿や汗、呼気に含まれて体外に排出されるのでしたね。
その分解の過程で必要となる酵素の働きには、水は必要不可欠なのです。
水を摂ることで身体の中のアルコール濃度を下げ、中和させることで代謝が活発になり悪酔いを防いでくれます。
以上の事から、飲酒時、飲酒後の水分補給は大変重要です。
イギリスのNHS(国民保健サービス)でも飲酒時の水の重要性、水の活用法を推奨しています。
・時間あたりのアルコール量を制限する
・ゆっくり飲む
・食べ物と一緒に飲む
・水やノンアルコールドリンクと、お酒を交互に飲む
参考・イギリスNHS(国民保健サービス)
胃の中のアルコールの濃度を水で薄めて下げることで、肝臓がアルコールを分解するときに必要な水分の補給にもなります。
また、水を間に挟むことで自然と飲むペースも遅くなり、結果として飲みすぎの防止にもなります。
水で割ったり、チェイサーなどでお酒と水を交互に飲みながら、アルコールをゆっくりと体内に取り入れ、血中アルコール濃度を上げないようにするのが重要なポイントです。
同様に、実は日本にも『和み水』という習慣があります。
お酒を飲まれる場合は、水も意識して飲むようにしてみて下さい。二日酔いの予防にもなります。
脱水症状を防ぐには
身体から水が失われるとき、同時に塩分や、カリウム、ミネラルも同時に失われます。
ですので、飲酒の際の水分補給にはそれらの栄養素を持つものを合わせて取ることが重要です。
飲んでいる合間は、それらの栄養素を含んだおつまみを食べるとよいでしょう。
具体的には、トマト、キュウリ、枝豆などがお勧めです。
そして、〆のラーメンはアルコールの分解で失った栄養素を補うのに最高なのは皆さまご案内の通り。
また、飲んだ当日の寝る前や起床時には経口補水液を飲むのもよいです。
血中にアルコールが大量に存在していると、肝臓は飲み終わった後、睡眠中も(効率は落ちますが)アルコールを分解し続けます。
その分解を助けるのがブドウ糖です。なので、お酒を飲むと低血糖状態になってしまいますので、
塩分や糖分の濃度が人間の体液に近く、素早く吸収されるように設計されている経口補水液は、まさに飲酒後の水分補給にはぴったりなのです。
二日酔いの予防にも水分補給は非常に効果的なのでで、お酒を飲んで帰ったら、就寝前に水分を飲むのようにしてみるとよいでしょう。
アルコール計算機
飲酒量から必要な水分を自動で計算してくれる非常に便利なサイトがありますので利用してみてはいかがでしょうか?
体重と飲んだあアルコール量から必要水分を算出してくれます。下記リンクよりサイトへ進んでください。
アルコール計算機へ
飲んだら寝ない
お酒を飲み過ぎてしまった場合、いっそのこと寝ないで起きているのも選択肢のひとつです。
なぜなら、睡眠中は肝臓の働きが低下するので、アルコールの分解速度も低下してしまうからです。
一般的に言われている、「寝れば抜ける」は間違いです。
飲酒後に「5時間起きていた場合」と、「5時間のうち4時間は眠っていた場合」とで、血中アルコール濃度を比較した場合、「眠っていた場合」のアルコール分解速度は、半分まで落ちるという実験結果が出ています。
これは、札幌大学が久里浜医療センターとの共同で行った実験で化学的に立証され、2010年にパリで開かれたた国際アルコール医学生物学会議で発表もされています。
実際に私もアルコール依存症全盛期だった頃、仕事が休みの日などで大量にお酒を飲みすぎた日、翌日にお酒を残さないようにと、飲んだらすぐに寝るようにしたりして、より長く睡眠をとるなどの工夫をしていました。
ですが、経験から言って、お酒が残っていることの方が多かったです。
睡眠中はアルコールの分解速度が、起きていた場合の半分程度にまで低下するのです。
このことから、飲みすぎた場合は早く寝るのではなく、むしろ夜更かしよしてアルコールの分解を促した方が良いのです。
起きていれば喉が渇くので、アルコールの分解に必要な水分を補給することもできます。
つまり、水を飲みながら夜更かしをし、果実でも齧りながら、ある程度酔いが醒めてきてから寝るのがアルコールを次の日に残さない合理的な方法です。
もっとも、その分睡眠時間は短くなってしまいますが、飲酒の代償と言ったところでしょうか………
お酒を飲むのは寝る4時間前までに済ませ、できるならば飲酒から就寝までは6時間くらい開けた方が無難とされています。
まとめとして
・空腹でお酒を飲むと、胃に留まらず、直接小腸に流れて行ってしまうため、悪酔いしやすい。
・アルコールの吸収を遅らせる為に、食べ物やおつまみを食べながら飲む。
・お酒とお酒の間に水を挟むなどして、アルコールを中和しながら飲む。
・脱水症状を防ぐため、飲んだ日の就寝前には水を飲んで寝るようにする(経口補水液が有効)。
・どの程度の水を飲んだらいいかのアルコール計算機はこちら。
・飲み過ぎた思った場合は、水を飲みながら夜更かしをして、ある程度アルコールが抜けてきてから寝るようにする。
まとめると以上ですが、要するにお酒をはやく分解するには、
お酒を飲み過ぎないことです。
アルコールの量を減らために、水で薄めたり、あるいは、チェイサーなどで水を補給しながら飲むのも、
飲酒量(アルコール摂取量)を減らすことが目的です。
アルコールの摂取量が肝臓の分解処理能力を超えないのならば問題はありませんが、
分解しきれなかったアルコールは、また血液に戻されて身体中を巡ることになります。
そのとき、まだ酢酸に分解されていないアセトアルデヒドも一緒に血液に戻されるため、頭痛や吐き気といった症状を引き起こします。
これがいわゆる二日酔いです。
二日酔いをしてしまうと、身体が非常にダルく感じますよね?
私がまだアル中だった頃、ほぼ毎日のように限界以上のお酒を飲んでいたので、常に身体にダルさがありました。
というのも、
肝臓はもともとアルコールの分解をする以外にも、食べ物から吸収された栄養をエネルギーに変えるという大事な仕事があります。
しかし、アルコールの分解にばかり追われていては、エネルギーを身体に送ることが出来なくなってしまいます。
結果として、身体はエネルギー不足に陥り、ダルさという症状となって現れます。
また、二日酔い主原因でアセトアルデヒドを分解するのに「ナイアシン」が必要とされています。
ですが、このナイアシンはセロトニンの合成時にも必要なもので、
飲酒でナイアシンが大量に消費されるとセロトニンが作れなくなり、うつっぽくなります。
セロトニン………気分を明るくさせ、やる気を出させる働きがある神経伝達物質です。運動、食欲、睡眠、不安などにも関わってきます。
その他にも、アルコールの代謝には、ビタミンB1・ビタミンB6、ビタミンB12、マグネシウム、亜鉛、カリウムなども大量に消費されます。
つまり、アルコールの代謝で大量の栄養素が消費されますので、身体の栄養不足はますます深刻になっていきます。
お酒を飲む人は沢山います。
お酒が一日の最大の楽しみなんだと言う方もいらっしゃいます。
でも、
悪酔いを繰り返して「大量飲酒」を続けて身体に負担をかけていれば、脳は負担の多い状態に適用しようとして、アルコールに耐性をつけていきます。
耐性がついてしまったら、同じ量では酔えなくなってしまうので、酒量が増えてしまいます。
常にアルコールが残る飲み方をしていると、少量の神経伝達物質でもバランスが取れるようになってしまいます。
しかし、お酒が抜けるとこのバランスが崩れて不快な離脱症状を起こすようになります。
不快な離脱症状を回避しようとしてますます飲酒をするようになります。
これがアルコール依存症です。
私はこのお酒の罠にはまって、10年以上にわたり依存症に苦しんできました。
楽しいお酒を続けるためにも、私のようにアルコール依存症にならない為にも、この記事を読んでいただいた皆様には、是非、上のまとめを守って、適切な飲酒を楽しんでもらえたらなと思います。