アルコールの分解、抜けるまでの時間は?
こんにちは。禁酒カウンセラーの溝尻啓二です。
新年会や忘年会のシーズンも終わり、今度は歓送迎会のシーズンがやってきますね。
新社会人の歓迎会に、これまでお世話になった先輩や上司の退職祝いなど、お祝いの時期が増える時期です。
楽しい時間でついつい飲み過ぎてしまい、二次会、三次会と参加し、アルコールが抜けきらず次の日に残るなんていうことも………
もし、そのまま車両を運転した場合「酒気帯び運転」の基準は満たしていなくても、「酒酔い運転」が成立する場合もありますのでお酒が残っていると感じた場合は運転を控えることをお勧めします。
お酒を次の日に残さない為にも、「どれぐらいなら飲んでも大丈夫」という目安を持つのは非常に大事なことですよね。
健康総合企業のタニタの調査では、実は「アルコールが抜けるまでにかかる時間」を4割以上の人が知らないという結果も出ています。
タニタ調べ
お酒を飲む習慣がある全国の20~69歳の社用車ドライバーとマイカー通勤者の計800人と、社員が社用車を運転することがある企業の役員・経営者200人を対象に調査。今年11月9日~14日にインターネットでリサーチを行い、12月6日に「飲酒運転に関する意識調査2018」として公表された。
そこで、今回の記事では『お酒が身体から抜けるまでの時間』を書いていきたいと思います。
➀身体からお酒が抜ける時間帯には非常に大きな個人差がある
結論から言ってしまうと、人の身体からお酒が抜ける時間には非常に大きな個人差があります。
お酒が完全に身体から抜けきる状態になるまでには、体内では、私たちが思っている以上に、様々な要素が絡んだ、複雑な変化が起きているからです。
アルコールが身体から抜ける時間に大きく関係してくるのは、飲酒量、アルコール度数のほか、対象となる人の身長や体重です。
一般的に、女性よりは男性の方が、高齢の人よりも若い人の方が、アルコールの分解能力は高いといわれています。
体重の重い人と軽い人が同じ量のアルコールを飲んだ場合、重い人の方が血中アルコール濃度が低くなり、酔いにくいとされています。
計算上では目安となる大まかな数値は出せますが、睡眠の有無や体調の良し悪しなど計算できないものがあるので、数値は大きく変動してきます。
また、お酒の分解能力は、その人のアルコール分解要素ALDH(アルデヒド脱水素酵素)活性型のタイプでも分解速度は大きく異なります。
ので、そんな『不確定要素』も、お酒が抜ける時間に深く関係してくるということも理解しておいてください。
➁アルコール分解要素ALDH(アルデヒド脱水素酵素)の有無
アルコールを分解する過程で、アセトアルデヒドという毒性物質が発生します。
飲むと顔が赤くなるのはアセトアルデヒドという有害物質の影響です。
二日酔いとはこのアセトアルデヒドが分解されずに身体に蓄積することで、頭痛や吐き気といった不快な症状を引き起こしています。
このアセトアルデヒドを分解するのがアルコール分解要素ALDH(アルデヒド脱水素酵素)です。
ALDHには、セトアルデヒドが低濃度の時に働く「ALDH2」と、高濃度にならないと働かない「ALDH1」、さらに「ALDH3」の3タイプが存在します。
このうち「ALDH2」の働きが弱いか欠けていると、有害なアセトアルデヒドを分解できないため、「お酒に弱い体質」になります。
この酵素の活性は遺伝子によって決まります。
特にアジア人はこの酵素の働きが弱く(面白い事に、白人、黒人にはALDH2低活性型はみられないそうです)、お酒が苦手な人が多いと科学的にも証明されていて、日本人の約4割はアルコール分解酵素を持たないか、その働きが弱いとされています。
また、ALDH2が完全に欠けている場合、いくら訓練してもお酒に強くなることはありません。
身体の小さい方でもアルコール分解酵素(ALDH2)をもっていれば短時間でお酒が抜けますし、逆に体格の良い方であってもこの酵素がなければ、お酒が抜ける時間は長くなってしまいます。
➂体重と血中アルコール濃度
一般的に体重の軽い人よりも、体重の重い人の方がお酒に強いとされています。
それは酔いの度合いは血中アルコール濃度で決められているからです。
血中アルコール濃度とは、その名の通り血液中に含まれるアルコールの量のことで、飲酒することで増加します。
この数値が高いほどお酒に酔っている状態で、お酒が抜ければこの数字も0になります。
この「血中アルコール濃度」を調べることでその人の酔いの程度を知ることができます。
血液100㏄中、50㎎程度でほろ酔い、200㎎以上だと酩酊といわれます。
血中アルコール濃度が500~600㎎を超えると昏睡状態となり、それを上回ると死に至ります。
ではなぜアルコールの強弱に体重が関係あるのでしょうか。
それは、血液量は体重の約8%と言われているからです。
血液量は筋肉量が多ければ多くなりますので、身体が大きければ、小さい人よりも多くのお酒を飲むことができます。
水を血液に置き換えると分かりやすいのではないでしょうか。
同じ10gのアルコールを1リットルの水と2リットルの水に加えた場合、後者の方がアルコール濃度は低くなりますよね。
体重により分解能力が上がるというよりは、血液量が多くなるので、結果的に血中アルコール濃度が低くなるのでお酒に強いことになります。
また、体重と肝臓の重量は、概ね比例するともいわれています。
ただし、アルコールを分解する能力は血液量とは関係なく、上記項目の分解酵素の有無や肝臓の分解能力等で変わります。
➃睡眠中はアルコールの分解速度が低下する
「飲んだあと6時間寝たから大丈夫!」
「飲んだら寝た方がいい。その方が早く抜ける」
このような話を聞くことがあります。
また、私自身お酒を飲んでいる時、よく口にしていましたし、そう思い込んでいました。
でも事実は全く逆で、実は睡眠はアルコールを分解する上では邪魔にしかなってなかったのです。
睡眠中は肝臓の機能も低下してしまいます。アルコールを分解するスピードは、起きている時のおよそ半分になるそうです。
起きているときはアルコールを分解する肝臓の機能が活発なのですが、睡眠中は機能が低下するわけです。
これは札幌大学と久里浜アルコール症センターの共同研究でも証明されています。
20歳代の男女24人を代謝に、体重1キロ当たり0.75グラムのアルコール(日本酒2合相当)を摂取してもらい、
その1時間後に睡眠をとった場合と、眠らなかった場合の呼気中のアルコール濃度を比べた結果、
4時間眠った後のアルコール濃度は、眠らなかった場合の約2倍で、この傾向に男女差はなく、
睡眠中はアルコールの分解が遅くなるのが分かったそうです。
個人差はありますが、肝臓が処理できるアルコールの量は、平均1時間に4~6グラムといわれています。
日本酒なら1合、ビールなら500ml缶一本でもアルコールの処理には3時間半ほど掛かります。
飲んだあと眠った場合、分解されるのに7時間以上掛かることになります。
眠った場合、起きていた時の倍の時間は、身体からアルコールが抜けないと思ってください。
➄空腹時の飲酒
空腹状態でお酒を飲むと、通常よりもお酒を吸収する速度が速くなります。
アルコールを吸収する速度が上がるので、血中アルコール濃度の上昇に、分解能力が追い付かなくなってしまうのです。
つまり、少量でもお酒に酔いやすい状態になってしまうことになります。
また、胃の中に何もないわけですから、アルコールを分解するのに必要なエネルギーも不足してしまうため、分解する速度も低下してしまいます。
空腹時にお酒を飲んだら、いつもより二日酔いになりやすかったり、お酒が残りやすいといった経験はありませんか?
私の知り合いは、パセリと塩だけで飲む人がいました。
私の場合は飲むと、ほとんど食べず、タバコばかり吸っていました。
お酒を飲むと、多くの場合、食欲が増すといわれていますが、このように稀に少量のおつまみ程度しか食べなくなる人もいます。
ですが、空腹時の飲酒は、通常よりもとても酔いやすく残りやすいので注意が必要です。
➅性別と体格
一般的に体格のよい人ほどアルコールを分解しやすいといわれています。
理由はふたつ。
ひとつは上記の項目でも述べたように、体重の重い人=アルコールが溶ける血液量が多いとされているからです。
もうひとつは、肝臓の大きさです。
アルコールの分解には肝臓の大きさが影響し、肝臓の大きさは体格に比例します。
肝臓は臓器最大の大きさで、心臓のおおよそ4倍にあたり、成人男性で1.2㎏前後、成人女性で1㎏前後といわれています。
ただ、例外もあります。
それはいくら体重が重いといっても、重い理由が筋肉ではなく脂肪である場合です。
脂肪がいくら増えても血液量はあまり変わりませんので、その場合小柄な人よりもアルコールに強いとはいえなくなります。
アルコールは脂肪には取り込まれにくい性質があり、脂肪が多いほど血中アルコール濃度は高くなります。
そのため、男性に比べて女性とアルコールの相性はあまり良くないと言えます。
男性と女性には体格差があり、成人男性と成人女性では平均して10㎏以上の差があります。
体質的にも女性は脂肪がつきやすく、筋肉がつきやすい男性とは筋肉量も違ってきます。
また、女性ホルモン(エストロゲン)には肝機能を抑制させる働きがあり、生理中は女性ホルモンの分泌が低下しますが、月経後から排卵までの時期は女性ホルモンの分泌量が高まります。
肝臓の働きは体調にも左右されますので、生理中は特にこの女性ホルモンの分泌量が複雑に変化するため飲酒との相性はよくありません。
➆身体からお酒が抜けるまでの計算式
「飲んだあと、ちょっと横になって休んだから大丈夫!」という言葉を耳にします。
ですが、そんな思い込みは大変危険です。
個人差はありますが、一般的に体重1㎏あたりで、1時間に0.1gの純アルコールが分解できると言われています。
お酒の抜けるまでの時間を割り出す計算式もあります。
➀ご自身の体重(㎏)に×0.1をした数字が1時間あたりで分解できる純アルコール量になります。
そして、実際に飲んだ純アルコール量(g)を➀で出した数字で割った数字が、アルコールの分解に必要な時間です。
つまり、
「純アルコール量(g)」÷(体重×0.1)=「アルコール処理に必要な時間」
となります。
純アルコール含有量(g)は、
お酒の量(㎎)×お酒の度数(%)×0.8(アルコール比重)
で表すことが出来ます。
同じお酒でもビールとウイスキーでは含まれているアルコール量が全く異なります。
アルコール含有量が多いいほど分解に時間が掛かりますので、アルコールの強いお酒を飲めば、それだけ体内からお酒が抜けるのに時間が掛かってしまいます。
仮に対象者を体重60㎏の人とした場合、ビールなら350ml缶で約2時間半、500mlになると3時間半掛かる計算になります。
もし500ml缶を3本飲んだ場合、約10時間はアルコールが身体から完全に抜けないことになります。
晩酌でも、350ml缶一本で満足する人は少ないのではないでしょうか。
これが飲み会になればビール500ml程度で済ませることはほとんどあり得ないことですよね。
また先記事の通り、飲酒環境や体調、アルコール分解酵素の有無などの個人差もあります。
それらも是非加味してください。
⑧便利な飲酒シミュレーション
計算式などを長々と書いてしまいましたが、細かい計算とか面倒くさいですよね(笑)。
なので、こんな便利なものがあるので下記にリンクしておきます。
飲酒シミュレーション
こちらは、アルコールチェッカー大手の東海電子さんのサイトで、自分の体重と飲酒量を入力するだけで、アルコールの分解時間を計算してくれます。
⑨まとめとして
➀ アルコール分解速度には、目安があるものの、環境や体調などで非常に大きな個人差がある。
➁ 顔が赤くならない人は、顔が赤くなる人よりもアルコールの分解が早い。
➂ 体重が重い方人の方が、痩せている人よりもアルコールに強い。
➃ 睡眠中のアルコール分解速度は、起きている時よりも遅い。
➄ 空腹時の飲酒は、酔いやすく残りやすい。
➅ 性別や体格によってもアルコールの分解速度が変わる。
➆ アルコールが抜けるまでの時間の計算式。
⑧ 飲酒シミュレーションでアルコールが抜けるまでの時間をチェック。
環境、体調、アルコール分解酵素の有無、体格、性別などでアルコールの影響は大きく変わり、アルコールが抜けるまでの時間も非常に大きな個人差があるということが理解していただけたと思います。
また、摂取したアルコールは、思っていたよりも簡単に抜けるものではないということも理解していただけたのではないでしょうか?
体内に取り込まれたアルコールは90%が肝臓で処理されます。
残りの10%が汗や尿となって体外に排出されます。
つまり、水分を大量に摂取したり、運動したり、サウナや入浴などで汗を流したとしても、酔いを醒ます効果は低いということになります。
汗や尿で排泄したから車に乗っても大丈夫という考えは大変危険です。
短時間で酔いが醒めるという事はありえません。
体重70㎏の人がビール500ml×4本を飲んだ場合の血中アルコール濃度のピークは1.7%。
「酒気帯び運転」に触れる血中濃度は0.03%以上(罰則は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)です。
体重70㎏の人がビール500ml×4本を飲んだ場合、計算上、体内のアルコールを分解するまでに11時間半近くかかります。
また、睡眠をとるとアルコールの分解速度は遅くなってしまいます。
深夜まで飲み続けた場合、自覚症状はなくても、翌日午前中の運転は「酒気帯び運転」になっている可能性が非常に高いのです。
お酒を飲んだ次の日は車両を運転しないことを強くお勧めします。
自転車の場合でも交通違反になるので、注意してください。