前のページでも述べましたが、ストレスを完全になくすことはできません。休養を取ることも第一ですが、心を軽くするためのヒーリング(癒し)も同じくらいに大切なことです。

自分でできるヒーリング

ひとつのことにとらわれる人ほどストレスを感じている場合が多いので、ヒーリングが必要です。心をいたわると共に、一時的にでも気がまぎれ、気持ちに余裕が生まれます。
たとえば、ウォーキングや軽いジョギングなどのスポーツ。
手をかける喜びが得られるガーデニングやブリーディング。
旅行は日常と違う体験ができますし、ペットは孤独感を癒してくれます。
さびしいときや悲しいときには、その気分と似た音楽を聴くのも『同調』といい、心の癒しになります。
太極拳や気功のようなゆっくり動く体操も効果的です。また、瞑想やマインドフルネスなどはヒーリングとストレス対策にもなり一石二鳥です。

自分で自分を苦しめていませんか?

自分の考えのクセをみつけてみましょう。四角四面にとらえて「~べきだ! ~ねばならぬ!」や、「どうせ~だから」と、否定的にとらえてませんか? また、ネガティブな受け止め方をして、自分はダメな人間だ、努力してもムダだ、というふうに自分を責めたりしていませんか?
ひょっとしたらその考え方が自分を苦しめているのかもしれません。
こういった物事の見方を変えてみましょう。
どんな物事にも悪い面もあれば良い面があるものです。その表裏をみつけ、良い面に注目します。たとえ何かに失敗しても、それもよい経験になった、ポジティブに捉えるようにしてみて下さい。同じ状況でも、人によってそれをストレスと感じる人、受け流す人、さまざまです。現実よりも受け止め方の違いといっていいでしょう。

物事を悪い方へ解釈するクセはありませんか?

たとえば、上司にきつく言われても、怒っているとは限りません。あなたの成長のためかもしれませんし、ただ単に機嫌が悪かったのかもしれないのです。
ストレスを少しでもソフトに受け止める為には、心の柔軟性が必要です。
いつも頑張ってる自分を、ときには「お疲れ様」といたわってあげてください。自分で自分を癒してあげてください。自分助けをしてあげてください。方法はなんでもよいのですが、自分がやすらげることを選んでください。

ストレスとは上手く付き合う

ストレスとうまく付き合っていくコツは、ストレスに対して意図的な対処をすることです。つまり「自分助け」をすることです。生きていれば、かならずあるストレスを自覚・理解したうえで、自分で自分を助けることです。
「好きな映画を見る」「好きな音楽を聴く」「美味しい料理を食べる」「とにかく寝る」「走る」など、誰でも思い浮かぶ「自分助け」があると思います。それを「ストレスのに対する対処」として意図的に行います。
ストレス心理学の世界では、この意図的なストレス対処の事を「コーピング」といいますが、「コーピングは本格的ではなくても、とにかくたくさんもっていたほうがいい」という考え方があります。立派なものじゃなくてもいいから、どんなに「しょぼいもの」でも、日常の中で実践できる小さな自分助けを、たくさん持っておこう、ということです。
ヒーリングはどんなに「しょぼいもの」でも、とにかく数を増やすのが鉄則です。
つまり、「質より量」と言い換えることができます。では、なぜ質より量なのでしょうか?
それはたくさんあれば「選べる」からです。職場、学校、家庭、友人関係など、私たちは生きているだけで、いくつものストレス環境にさらされています。それによって引き起こされるストレス反応も様々です。
その中で、「今回はこれを試そう」「前回はこれを使って効果が少なかったから、今日はこっちを試してみよう」というふうに、ストレスに応じて様々な対応を試してみることが大切なのです。
そしてこれが重要なのですが、えら選べるということは『依存』しないですむということにもなります。

選択肢は多く持っておく

たとえば、「ポテトチップを1袋食べる」という対応をしたとしましょう。最初は落ち着いて気分も晴れるかもしれません。ですが、次も同じ効果が得られるとは限らないのです。
そうなったときにレパートリーが少ないと、その対応方法にしがみつき、1袋が2袋、3袋………となり、健康を損ない、高血圧、糖尿病などの症状や疾患を悪化させることになりかねないのです。お酒やタバコ、カフェインなどのもともと依存性があるものなら尚更依存症になる可能性を高めることになります。
ストレスを解消する努力が、依存を誘発するというのは実に皮肉なものです。それなのに、私たちは同じ方法や同じ考え方を繰り返すことが往々にしてあります。たとえその方法や考え方が望ましい結果をもたらさないとしても、あるいはもっと悪化するとしてもです。
その点、例えばレパートリーが100個もあれば、1個がダメでも残り99個もあります。
「あれがダメなら、こっち」と様々な対応を当てはめていき、最適な効果を発揮するものをみつけていくことができます。
自分なりのストレス解消法をもち、また、それ「だけ」に頼らないことが大切です。
「生きがいは仕事だけ」、「ストレス発散はお酒だけ」、「ゲームだけが唯一の楽しみ」、「SNSだけが自分の居場所」、「あの人だけが私の生きがい」、あるいは「子供の世話だけ」のように選択肢が少ないと、それだけを何度も繰り返してしまい、結果、依存してしまうことになってしまうからです。
ストレス発散のコツは、「質より量」「しょぼいもの」でも良いので、様々なストレス解消の方法を持つことをお勧めします。
でも、そういうと「『しょぼいもの』ってどれくらいのものまでいいの?」と思われるかもしれません。その答えは「なんでも」です。
「ボールペンの数を数える」「ハサミで紙を切る」「夕食のときに飲むビールの事を想像する」「プチプチをつぶす」「手を洗う」「大きくため息をついてみる」など、それが少しでも自分助けになるのであれば、ぜひヒーリングのレパートリーに加えるといいでしょう。
「鏡の前で笑顔をつくってみる」というのも非常に効果的です。楽しくなくても無理やり笑ってみる。「楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しくなる」という理論は、心理学でも認められているものです。

 

たとえば、私はある本で読んだ方法を試すことがあります。それは、何か嫌な気持ちになったときに、その心のつぶやき(自動思考)に「~と思った自分を受け入れ、認め、ゆるし、愛しています」と繋げるだけです。いたってシンプルで、非常に効果的です。自己肯定感を高める効果も期待できます。

私は〇〇〇と思った自分を受け入れ、認め、ゆるし、愛しています。
〇〇〇に心のつぶやきを入れるだけです。

例・私は、「やってらんねえよ!」と思った自分を受け入れ、認め、ゆるし、愛しています。
例・私は、「自分は本当にダメな人間だな………」と思った自分を受け入れ、認め、ゆるし、愛しています。

そこからスタートし、その次に思い浮かんだ心のつぶやきを、そのまま、またこのフレーズに入れて言います。
どんなにイヤな自分であろうとも、
「私は、〇〇〇〇と思った自分を受け入れ、認め、ゆるし、愛しています」
と、4つの言葉をで自分の素直な気持ちを全肯定していきます。

また失敗してしまった自分が嫌だと思ったなら、「また失敗してしまた、私は最低だ………と思った自分を受け入れ、認め、ゆるし、愛しています」と言います。その次に湧き上がってくる感情も同じように繰り返して全肯定していきます。
たとえば、「でも、あんな言い方はないよな」と、思いが湧いてきたなら「でも、あんな言い方はないよな、と思った自分を受け入れ、認め、ゆるし、愛しています」と言います。
次に、「明日から仕事に行きづらいなぁ」と不安が出てきたら、そう思った自分も受け入れ、認め、ゆるし、愛します。

これを1分、2分、5分、10分と自分の心がスッキリするまで、ひたすら湧き上がる思いを4つの言葉で全肯定していきます。
終え方は、スッキリしたら終了ですが、いつ終えても大丈夫です。

本気で受け入れなくてもいいのです。ただ、このフレーズを言っているうちに、次第に気持ちも変化していきます。
受け入れられると、癒しが起こります。
癒しは「受容」から起こるからです。人は認めてもらってからじゃないと、なかなか新しい一歩は踏み出せません。感情も一緒。まずは、良い悪いのジャッジをせず「受け入れ、認めてあげる」ことです。
慣れてきたら心のなかでつぶやくだけでもいいのですが、最初は声に出すとなお変化が早いです。
ムカッと来た時に、1回言うだけでもいいです。

これはいわゆる、「自動思考に対するマインドフルネス」です。お勧めのワークです。用意も準備の手間もかからないので、是非やってみてください。