環境と素因によって進む依存
誰にでも不安はあるものです。酒でストレスを発散する人も多いと思います。しかし、全ての人が私のようにアルコール依存症になる訳ではありません。
アルコール依存症は、どのような経過を経て進行してゆくのでしょうか。
・依存症の進み方
アルコール依存症は、もともと不安を感じやすい人が、アルコールによる快感を知り、不安から逃げようとして始まると言われています。
現状の問題を受け止められず、また、アルコールに頼れば頼るほど、アルコール依存は進んで行きます。
【もともとの素因がある】
依存症になった人は積極性や不安解消などにかかわる神経伝達物質が少ないということが報告されているそうです。
実際、私も性格は内気で心配性、大人しく憂うつな感じと言われていました。(仮説………幼児期の体験にもよりますが、子ども時代、安心と満足を得られなかっため、神経伝達物質が不足するようになったという説もあります)
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【酒の力を覚える】
お酒を飲むと、神経伝達物質が脳内に長くとどまったり、量が増えることによって、内気で心配性な人が、前向きな人になり、自分が大きくなったような思いで満たされます。
お酒の力を借りて日ごろ言えない愚痴をこぼす、ストレスを晴らすようになると、依存は一歩進んだとも言えます。
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【環境要因が後押し】
日常生活の悩みや心配があると、神経伝達物質のバランスが乱れ、不快な気持ちになります。
これが大きくなればなるほど、お酒の力を求めたくなります。
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【耐性がつく】
大量のお酒を飲み続けると、脳は負担の多い状態に適用しようと耐性をつくります(異物に対して免疫をつくるようになる)。もっと大量に飲まなければ、酔えなくなってしまうのです。
耐性がつけば、酒量は増え、酒に強くなったと思い込んでしまいます。
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【離脱症状を回避する】
常にアルコールが脳に残る飲み方をしていると、少量の神経物質でもバランスが取れるようになってしまいます。
しかし、酒を断つとこのバランスが崩れて不快な離脱症状を起こすので、やめたくても断酒できなくなってしまいます。
量と惰性で重症化する
アルコール依存症に陥る背景のひとつには、辛い現実と向き合うことができず、酒に逃げる生き方があると思います。
したがって、飲むための動機と、大量の酒を習慣的に飲み続ける体力があればあるほど、アルコール依存症は進んで行くことになります。
また、お酒を飲む女性の増加に伴って、女性のアルコール依存症も増えていると言われています。
なかでも、主婦のキッチンドリンカーは多く、深刻な問題をはらみます。
女性のアルコール依存症で特徴的なのは、結婚、育児、子離れ、夫との離別などのライフステージとのかかわりが深いことです。
その時々のステージで、ストレスや不安、空虚感を感じ、心の健康を崩し、アルコールに逃げることを覚えて行ってしまうのです。
アルコール依存症の離脱症状
アルコールには早期離脱症状と後期離脱症状の二種類があり、早期離脱症状はお酒を断って数時間すると出現し、後期離脱症状は飲酒をやめてから2~3日で出現し1週間ほど続く場合があります。
離脱症状と聞くと、「薬物」をイメージしてしまいますが、アルコール飲料の主成分は、エチルアルコールという依存性薬物です。
離脱症状がアルコールでも引き起こされることはあまり知られていませんが、お酒を飲んで問題行動を起こさない方であっても、もし定期的にお酒を飲んでいるのなら、なんらかの形で精神や身体に離脱症状が現れています。
【症状の内容】
手や全身の震え、発汗(特に寝汗)、不眠、吐き気、嘔吐、血圧の上昇、不整脈、イライラ感、集中力の低下、幻覚(虫など)、幻聴など。
断酒うつ
あまり知られていませんが、離脱症状からの回復時に「うつ」なる場合もあります。
遷延性離脱症候群が原因です。
アルコールを摂取すると、神経物質が大量に放出され良い気分になるわけですが、こうした物質が外部から取り入れることに慣れてしまうと、脳は神経物質の生成を怠るようになり、外部からの摂取に依存するようになってしまいます。
お酒をやめることで、こうした神経伝達物質の外部供給が無くなってしまうため、精神が安定しなくなり、感情や精神、睡眠などに影響が出ます。
断酒うつとは、これまで体内に供給されていた神経伝達物質が供給されなくなるため脳内の感情バランスが崩れてうつ状態になることです。
集中力の低下やイライラ、不眠、早朝覚醒などの苦しい状況が続くため、禁酒を断念してしまう人も多いと思います。ですが、断酒うつの症状が出ているということは、断酒に真面目に取り組んでいるという証拠であり、回復に向かっている証拠でもあるのです。